今回はJohn Homer Miller という思想家の言葉に目を向けてみましょう

Your living is determined not so much by what life brings to you as by the attitude you bring to life; not so much by what happens to you as by the way your mind looks at what happens. Circumstances and situations do color life but you have been given the mind to choose what the color shall be.
John Homer Miller


あなたの生き方は、人生があなたにもたらしたものではなく、 むしろそれに対してあなたがとった態度によって、つまり、何が起こったのかではなく、 どう解釈したかによって決まる。
周囲の事情やあなたが置かれた立場が人生を色づけていくことは確かだが、 何色にするかを決めるのは、あなたの心だ。

de・ter・mine  /ditə́ː(r)min/  決定する
at・ti・tude  /ǽtət(j)ùːd/ 〔…に対する〕態度,心構え,気持(の持ち方)
cir・cum・stance /sə́ː(r)kəmstæ̀ns [通例~s] (周囲の)事情,状況,境遇
sit⁃ u⁃ a・tion /sìtʃuéiʃn/ (人が置かれた)立場,境遇,状態
choose /ʧúːz/ 〈物・人〉を選ぶ

a positive atttude 積極的な態度
a negative attitude 消極的な態度

Your living is determined と、いきなり受身型で始まります。この受動態について触れておきましょう。 というのもボクは、英語を勉強したての頃、この受動態がいまいちよく判りませんでした。 学校でやる機械的な書き換え問題は出来ましたが、能動・受動の関係が理解出来ていませんでした。 また「〜る」、「〜られる」といった変な日本語にも違和感を感じ、吐き気さえも模様する始末。

ですが、いくつかポイントをおさえると、だんだんと分かってきて、 「〜る」、「〜られる」といった言葉遣いに、「そうか、言葉ってうまい具合にできているんだな」と、 今度は感動すら覚えるに至った次第です。

まず、受動態を理解するには動詞の方向性について知っておく必要があります。 動詞には大雑把に言って”=(イコール)的なもの””→的なもの”があります。 ”=的なもの”はbe動詞で”I am a boy.”とか"She is a student."といった(I = boy)、 (She = student)の意を表すものです。5文型で言うところの第2文型 (S + V + C)がそれにあたります。

一方、”→的なもの”は”She broke the vase.”とか ”He kicked the ball.”といった ”the vase(花瓶)”や”the ball”に影響を及ぼすbroke(break)やkicked(kick) といった他動詞のことです。つまり「目的語に影響を及ぼす動詞」ということになります。 5文型で言うところの第3文型(S + V + O)です。 イメージとしては「彼女は(叩きつけるといった何らかの力を及ぼして→)花瓶を壊した」、 「彼は(足で力を及ぼして→)ボールを蹴った」と、主語が目的語に力を及ぼしています。S→O

この力関係が逆になると、つまり矢印の方向が逆になると、受身になるのです。→OからO←です。 主語が、影響を及ぼすものから、影響を受けるもの(もしくは及ぼされるもの)へと変わります。

先の例文で言うと主語がSheからThe vaseへ、HeからThe ballへ変わるわけです。 この主語を変えることによって、彼女のことを言及するのではなく花瓶について、もしくは、 彼のことを言及するのではなくボールのことについて語ることになります。 ようするに語りたい内容が変わるわけです。ですから学校でやった書き換え問題などは (練習としてはいいのでしょうが)あまり意味がなく、大切なことは 「受動態は目的語に視点が変わる」 ということなのです。 学校では「どちらも同じ意味です」なんてふうに教えられますが、 言及しようとしている対象物への視点が変っているので、ニュアンスはどえらく違います。

そして、この時に用いられる公式が be動詞 + P.P.(過去分詞) なのです。

といったワケで先の例を受動態にすると、

The vase was broken (by her).  the vase ← broken

The ball was kicked (by him).  the ball ← kicked

となります。by her や by him は受動態だから必ずつけなければならないわけではなく、 必要なさいに添えられます。言いたいことは「花瓶がどうなったか => 壊れた」 「ボールがどうなったか => 蹴られた」ということだからです。

このことからも、何でもかんでも能動態から受動態への書き換えを練習させる学校方式があまり実用的でないことが判ります。 というか、あの練習をやるから受動態には最後に必ずby〜 がつくといったイメージを連想させられるのです。

例題としてやった花瓶とボールの文章も良い表現とはいえないでしょう。

それでは能動態らしさ受動態らしさとは何なのでしょうか?

まず、よく使う表現とそうでない表現を見てみましょう。

Adam and Eve were expelled from Eden. (よく使う:第3回参照)

Justice has been done. (よく使う:第1回参照)

Osama bin Laden was killed in a firefight with United States forces in Pakistan. (よく使う:第1回参照)

My ring was stolen. (よく使う)

Japan’s prime minister〇〇▲▲ was killed. (よく使う)

The security code has been changed. (よく使う)

Vader was seduced by the dark side of the Force.
ヴェーダーはフォースの暗黒面に惹きつけられたのだ(よく使う 映画『スター・ウォーズ』)

She got caught red handed with a doughnut.
彼女はドーナツを盗み食いしているところを見つかってしまった。

We are said to be living in the "information age," (よく使う)
現代は情報時代だと言われている。

We are said to be living in a postmodern age (よく使う)
現代はポストモダニズムの時代だと言われている。

Japanese houses were once called "rabbit hutches". (よく使う)

The ball was kicked by him. (あまり言わない)

You are loved by me. (言わない)

catch red-handed 現行犯で捕まえる 
rabbit hutchうさぎ小屋

といった感じで、行為者(力を及ぼす者)を強調する必要が無い場合や、 判らない場合で、かつ目的語を強調するときに受動態がよく使われます。ですから、 最後のYou are loved by me.なんて表現は、文法的には正しくても、ありえないわけです。 だって強調したいのは私があなたを愛していることであって「あなたは私に愛されている」 なんて日本語でも変でしょ。 逆に「日本の〇〇▲▲首相が殺された」なんて言う場合は、たとえトムが犯人だと分かっていても Tom killed〜なんて表現にはなりません。あの、〇〇▲▲首相が!! と、文頭にくるわけです。 それに犯人が判っていない場合も受動態は便利です。 セキュリティ・コードが変えられていた場合も誰が変えたかわからないので、受動態といった感じです。

さて、本文に戻りましょう。

まずは1文目

Your living is determined not so much by what life brings to you as by the attitude you bring to life; not so much by what happens to you as by the way your mind looks at what happens.

あ〜、長い。ですが長いからこそスラッシュリーディングが威力を発揮します。

Your living is determined  / あなたの生き方は決定されます。
not so much by what life brings to you  / 人生があなたにもたらしたものによってではなく
as by the attitude you bring to life  / あなたが人生にもたらした態度によって
;  / つまり
not so much by what happens to you  / あなたに起こったことでなく
as by the way your mind looks at what happens.  / 起こったことへのあなたの味方によって(生き方は決定されるのです)

not so much A as B
口語では別として、受験英語にはよく出てくる表現なので覚えておきましょう。 「Aというより、むしろB」といった意です。

He is not so much a teacher as a scholar.
 彼は先生というよりは学者だな。

His success is not so much by talent as by effort.
 彼の成功は才能によってではなく、むしろ努力によってなされた。

She has not so much patience as you.
 彼女はあなたほど強くない。

Circumstances and situations do color life  / 事情や立場は人生を色づけていく
but you have been given the mind  / しかし、あなたには精神が与えられている
to choose what the color shall be.  / その色を何色にするかを選ぶ(精神が)

Circumstances and situations do color life.

doは強調表現(the emphatic do)です。

I do love you.

I do like this beer!

"I don't believe he works very hard."
"Yes, he does work hard." ※1

I do try to make my son do his homework, but he refuses to cooperate. ※2

I did think you were going to speak to him about it. ※2

I do hope he’ll try harder this year. ※2

You have been given the mind to choose 〜
現在完了+受身型。元の形は
God have given you the mind to choose 〜
You have been given the mind to choose 〜で最後に”by God”と付けないのは、 そんなこと分かりきっているからです。キリスト教の国では、与えるのは神、受け取るのは (与えられるのは)私たち、ということです(理由は第3回を参照してください)。

では「何色にするかを決めるのは、あなたの心だ」と、かなり意訳していますが、 文化的…否、むしろ宗教的背景の違いから、こういった訳になることが多々あります。 日本は圧倒的に無神論者が多いため、文章に『神』といった言葉が出てくると抵抗を感じる人が多いのと、 受動態文章があまり好まれないため、などの理由かと思います。 ただ、ハッキリと言えるのは、この意訳が原文のニュアンスを歪めることがある、 ということです。 今回の「何色にするかを決めるのは、あなたの心だ」という表現は、 自分で訳しておきながら意訳しすぎのように感じますが、 ここを「あなたには何色にするかを選ぶ心が(神から)与えられているのだ」 としてもギコチないような…。う〜ん、ジレンマです。

では、全文をもう一度スラッシュリーディングしましょう。

Your living is determined  / あなたの生き方は決定されます。
not so much by what life brings to you  / 人生があなたにもたらしたものによってではなく
as by the attitude you bring to life  / あなたが人生にもたらした態度によって
;  / つまり
not so much by what happens to you  / あなたに起こったことでなく
as by the way your mind looks at what happens.  / 起こったことへのあなたの味方によって(生き方は決定されるのです)
Circumstances and situations do color life  / 事情や立場は人生を色づけていく
but you have been given the mind  / しかし、あなたには精神が与えられている
to choose what the color shall be.  / その色を何色にするかを選ぶ(精神が)

次は通常の文を読みます。

Your living is determined not so much by what life brings to you as by the attitude you bring to life; not so much by what happens to you as by the way your mind looks at what happens. Circumstances and situations do color life but you have been given the mind to choose what the color shall be.
John Homer Miller


最後にこういったことを熟考した人たちの言葉を載せ、今回は終りにしましょう。

It all depends on how we look at things, and not how they are in themselves.
Carl Jung

物事を、どうあるかではなく、どう見るかにすべてがかかっているのだ。
It isn’t your problems that are bothering you. It is the way you are looking at them.
Epictetus(AD 55 – AD 135)

あなたを煩わせているものは、問題ではない。問題に対する見方だ。
People can alter their lives by altering their attitudes.
William James

人は、態度を変えることで、生き方を変えることができる
I find the great thing in this world is not so much where we stand, as in what direction we are moving: To reach the port of heaven, we must sail sometimes with the wind and sometimes against it, but we must sail, and not drift, nor lie at anchor
Wendell Holmes

この世で最も偉大なこととは、どこにいるかではなく、どこに向かっているかということだ。
天国の港にむかって、私たちは、時には風と共に、また時にはそれに対して航行しなければならないが、 とにかく航行するのだ、漂流することなく、停泊することなく。

※1 http://www.michellehenry.fr/emphasize.htm
※2 http://www.bbc.co.uk/worldservice/learningenglish/grammar/ask_about_english/071112/