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「これが……ボクの過去なのか」 頬を流れ落ちる涙を、ボクはぬぐう。 「ううん、違うわ」彩香は首を振った。「あなたの現実――と言うより、あなたが一番スポットをあてている過去意識よ」 「ボクは、人を殺してしまった。ファラオを、ツタンカーメン王を! あんなにもボクのことを信頼して何もかもを打ち明けてくれていた王を、ボクは、ボクは……剣のつかで殴り殺してしまったんだ!」 頭を抱え込むボクに、彩香は両手を優しくまわし「あなたのせいじゃないわ」と抱きしめてくれた。 「いや、ボクのせいだ。ボクはツタンカーメンとの友情より安泰な生活を選んだんだ。ボクは、どうしようもない卑劣な奴だ!」 「そんなに自分を責めちゃダメ!」 「ボクは、ボクは……」 悲哀の深みに咽びつつ、ボクは自分を責めた。だがもう一方では、突きつけられた過去意識を認めたくなかった。なぜならそれを認めると、自分が卑屈で薄汚い裏切り者になってしまうからだ。こんなのは、ボクじゃない。今の――現在意識のボクは、もっと平凡な生き方をしていて、ときどき人に嘘ぐらいはついたことはあるが、それはきっと人並みほどのはずだ。だが、もし今現在において、ボクがあのような――ジェドのような立場に置かれたとしたら、やはりボクも、怯懦な行動をとっていたのであろうか。そう思うと、ボクはボクがこれまで過ごしてきた状況だけに救われてきたことになる。 しばらくして、落ち着きを取り戻したボクは、彩香に訊ねた。「なあ、彩香。あれは過去意識――という現在意識と平行している現実なんだよな?」 「そうよ」 「それならボクは、その現実を変えられるはずだよな。あの時の行動を変えさえすれば……」 ボクは、すがるように彩香を見つめた。 彼女はゆっくりと首を振る。「森岡君には、出来ないわ」 「どうして、もう一度あの意識にシフトすれば、きっとボクは……」 「現在意識を充分に生きていない森岡君には無理よ。感情が巻き込まれて、もう一度同じことを繰り返すだけだわ。下手をすれば迷宮に迷い込んでしまう」 「なら、過去は過去。未来は未来。変えることなど出来ない独立したものじゃないか。結局、過去は変えられないんだ!」 「ちがう! 変えられるの。すべてのものは何一つ孤立することなく繋がっているから。だけど、今の森岡君には変えられない!」叫びをを、あらわにして「その理由を、教えてあげるわ」と彼女はボクの手を握りしめる。一瞬間後、ボクは大きな宇宙空間をさまよっている気分を感じている。 彩香とボクは、光の中を飛んでいた。 「彩香、ボクはやはりヤハウェの発音を伝えなければならない人に伝えることが出来なかったのか?」 「そのことは、おいおい判ってくるはずよ。それより、手を放さないように気をつけてね。今度は森岡君と私とでスポットを合わせるから。感情に流されないように気をつけて」 「判った」 二人の弟子たちにロバを借りてくるように命じると、イエスはそれに乗ってエルサレムに入場した。民衆からの熱烈な歓迎が、彼を待っていた。ひと目でも彼を見ようと、おびただしい数の人々が集まり、彼らは自分の上着や葉のついた枝をじゅうたんのように地に敷き詰めた。歓声の中、イエスは、そのじゅうたんの上をゆっくりと行進した。だれもが口々に「ホサナ、主の御名によって来られた方に祝福あれ。今来られた、我らの父ダビデの国に祝福を。いと高き所に、ホサナ!」と歓迎の声をあげた。 それからイエスは、神殿に向かった。これは良いユダヤ人がエルサレムに入る時の習慣だったのだが、神殿に入るや、彼は神殿内で商売が行われているという堕落振りに怒りをあらわした――両替人の金を撒き散らし、ハトを売る者たちの腰掛を蹴り倒し、追い払ったのだ。やられた者達は、口々にイエスを汚す言葉を吐きながら、神殿を後にした。 その後、イエスは民衆に教えを説き始めた。 また、こんなことをして……。 こんなことをすれば、ますます祭司たちや学者たちのひんしゅくを買うばかりなのに……。先生ともあろう方が、なぜそれくらいのことに気がつかないのだろう。 それが、その日のイエスに対するユダの印象だった。 次の日、またその次の日も、イエスは神殿に足を運び、人々に教えを説いた。 侮辱を加えられた神殿の祭司や律法学者たちが命を狙っていることぐらい先生もご存知のはずなのに、まったくの自殺行為だ。今まではパリサイ人やサドカイ人の嫌がらせを何とか潜り抜けることが出来たが、そのうち揚げ足をとられるようなことにでもなったら……。 ユダは、説教をするイエスの姿を、後方の柱にもたれてボンヤリと眺めていた。 「それにしても……」ユダはため息混じりに呟いた。「使い込んだみんなのおカネをどうしようか」 イエスの弟子であるにもかかわらず、彼はどうにも取り返しのつかないことをしでかしていた。イエスは彼のことを信頼して、一行の金の管理を任せていたのだが、こともあろうに、その信頼を裏切り、使い込みをしていた。最初は、微々たる金額だった。すぐに返せるとユダは思った。が、少しだけ、あと少しぐらいはいいだろうとやっているうちに、気がつくと、返せないほどの使い込みをしてしまっていたのである。 苦痛を吐き出すように、彼は呟いた。「私は、先生がおっしゃっている神の王国には、入る資格が無い……」 ひょっとしたら、先生はもうおカネのことに気づいていらっしゃるかもしれない。いや、それはないだろう。もし気づいていれば――あれだけ真理には厳格な人なのだ――ボクのことを怒るに違いない。しかし、それが無い。ということは、まだ気づいていないはずだ。 すぐにカネを作らねば……。 だが、どうやって? いや、ちょっと待て。ひょっとしたら、そのことに気づいているが――実は、先生はもうボクことを見捨てていて――それで、何の咎も無いのかもしれない。 そういえば・・・。 思い当たる節がある。 あれはいつだっただろうか? 過ぎ越しの祭りの何日か前に、イエスと弟子たち一行は、ベタニヤにあるラザロの家で食事をとることになった。イエスは以前、重い病で死んでしまったラザロを、奇蹟の力で甦らせたことがあったのだ。ラザロは勿論のこと、姉のマルタも妹のマリヤもできる限りのもてなしをした。 だが、あの時の彼女の贅沢は、やはり間違っていたはずだ。 イエスを自宅に迎え入れ、姉のマルタが食事の準備をしている間、テーブルでイエスとラザロは話をしていた。そこに、妹のマリヤが現れ、信じられないようなことをしたのだ。 彼女は、三百デナリはする量のナルドの香油をイエスの足に塗り、自分の髪でそれをぬぐいだした。三百デナリと言えば、三百日分の報酬に値する。 「何のために、こんなに貴重な香油を無駄に使うのか!」 ユダは、すかさず彼女を叱りつけた。 普段から贅沢への戒めは厳しいイエスだった。それゆえ、叱ることが当然だ、とユダは思ったのだ。 ところが、戒められたのは、ユダの方であった。 「彼女のするままにさせておきなさい」とイエスはユダを制した。「彼女は、よいわざをなしたのだ」 普段の先生だったら、絶対にそんな贅沢者には、容赦の無いお叱りがあるはずだ。それが、無かった。と、言うことは……。 あれは、私のことを憎んでの発言であったのではないのか? 先生は、やはり気づいているに違いない。 いや、どうだろうか? いずれにしても、カネだ。カネをつくらなければ、私は救われない。他の弟子たちに気づかれる前に、何とかしなければ。手っ取り早い方法で……。 その時、 柱の影から、鈍い声がユダの耳元で囁いた。「あいつの弟子だな」 その晩のゲッセマネの空は、闇に包まれていた。 「いいですか、私が口づけをする人が先生です。くれぐれも間違えないように」 脂の乗り切った腹の立法者が頷く。「判った、早くいけ」 ユダはパリサイの学者陣と打ち合わせをした。彼らの背後には、剣や棍棒を手にした役人や兵士たちが群れをなしていた。 やがて、オリーブ山で祈りを終えて戻ってくるイエスの姿が見えた。ペテロ、ヤコブそれにヨハネを伴っている。 ユダは、群集を引き下がらせた。「ここに隠れていてください」 だんだんと、イエスが近づいてきた。 それを確認し、ユダもイエスに向かって歩き始める。 一歩、また一歩と――隠れ家での晩餐の出来事を思い出しながら――歩むにつれ、イエスへ対するユダの憎悪は、増していった。 「この中に、私を裏切ろうとしている者がいる」 イエスは、言葉を漏らすように言った。 弟子たちの手が止まり、静けさが一気に部屋中に漂う。 彼らは、互いに顔を見合わせ、動揺した。 「いったい、だれが先生のことを裏切ると言うのですか?」 弟子の一人が訊いた。 「このパンを、私の手から受け取るものがそれである」 イエスはそのかけらを、ユダに示したのだ。 やはり先生は、おカネのことに気づいていた。先生は私のことを嫌っている。 ユダの鼓動は激しく高鳴り、体全体が震え始めた。 イエスはユダに囁いた。「さあ、しようとしていることを、今すぐするがよい」 イエスからパンのかけらを受け取ると、ユダは激しい目眩を感じた。 もうダメだ。 何もかも、すべてが…… ああ、どうして私は―― ユダは、隠れ家を飛び出した。 そして、今―― 「先生、私は……」 ユダはイエスを見上げた。 静かにイエスは、ユダを見つめている。 「私は……」 ユダは、唇を噛みしめた。 「さあ、私に口づけをするがよい」 微笑みながら頷くイエスに、ユダは唇を重ね、そして、あらためてイエスを見た。 「先生……」 少し後ずさり、ゆっくりとユダはイエスに背を向ける。 と同時に、身を隠していた群集が一斉に飛び出してきて、たちまちイエスを囲んだ。 ユダは、震えながら後ずさりしつつ、群れから抜け出す。と、一気に走り出した。 駆けた。夜を走り、闇を駆け抜けた。 もう何もかもがおしまいだ。私は何という事をしてしまったのだ。こんなことは、嫌すぎる……。 その時、彼は小石につまずき、バランスを失った。 真っ白な光がユダを包み込む。 大きな山々に囲まれた田園には、蝉たちの声が響きわたっていた。木々の緑がかすれあう音。日差しが、眩しかった。せせらぎが輝く雨上がりの小川で、子どもが水遊びをしている。ボクだ。それは、子どもの頃のボクだった。 この風景は、九州のお婆ちゃん家の近所だ。 そうだ、その時ボクは、カエルを捕まえたかったんだ。でも、あの表面のヌルヌルが気持ち悪くて、つかまえることが出来ずにいたんだ。怖くて、ただ見ていただけ。 と、そこにチリリンと鈴の音。 「何を見ているの、淳くん?」 女の子の声が、ボクの後ろからした。 「えっ? か、カエルを……捕りたいんだけど、でも……」 ボクは恥じた。 「へーえ」と言って、彼女はボクの横にしゃがみこむ。愛くるしい瞳が、川の流れに向けられた。「ねえ、あっちでみんなと一緒に遊ぼうよ。川の近くで遊んじゃダメだって、お母さんが言ってた」 「うーん。でも……」 ボクは膝を抱え込んで、そのまましばらく黙りこくっていた。 「ねえ、淳くん。あたしが捕ってあげようか?」 にごった雲をさえぎったのは、彼女。 「えー、でも……」 「だいじょうぶ。ねえ、これでいい?」 彼女は川縁のカエルに「えい!」と手を伸ばした。 「ほら、すぐに捕れたでしょ。はい」 ボクにカエルを手渡そうとした。 ボクは「うーん」と唸ったきり、素直にそれを受け取ることが出来なかった。だって、あの黄緑色のヌルヌルが……。 「ねえ、怖いのぅ?」 「……」 何でだろう、ボクは目に涙をためている。 不安定なボクの気持ちを察してか、話題を変えようと彼女は口を開いた。「ねえねえ、淳くん。ドナルドダックとミッキーマウス、どっちが好き?」 「えっ?」 ボクは俯きしゃくりあげながら「ミッキー……かな」と答えた。 「ふーん。あたしは……」 それきり、声が途切れたかと思うと、水の跳ねる鈍い音とともに「あっ!」と、悲鳴があがった。 「――!」 いない! 「淳くん!」 川に流されている。雨で濡れた草に足を滑らせたのだ。 「わあ! ど、どうしよう!」 「淳くーん!」 どんどん彼女が流されていく。助けなければ、でも……。 足がすくんで、その場にしゃがみこんでしまった。 「淳くーん!」 と助けを求める悲鳴に呼応して、ボクはありったけの声を張り上げた。「あやのちゃーん!」 えっ? え、えっ? あ・や・の――ちゃん? まさか……。 でも、 でも、そうだ。 彼女の名前は、綾乃だ。 そんな、そんなことが……。 「彩香ァ!」 叫んでボクは、彼女から手を離す。 「君は、君は……」 目の前に立つ彩香を、ボクはすがるように見た。 「うそだ」 無意識的に、言葉が漏れた。 そういえば、ボクはどうやって彩香と知り合ったというのだ。彩香が働いていた飲み屋の名前は? 店の場所は? ママさん、もしくはマスターの名前や顔は? みんな思い出せない。 それだけではない。子どもの頃のボクはどこの幼稚園や小学校に通っていただろう? 友達の顔や名前が、思い出せない。何も記憶に無い。ボクには、ボクには―― 子どもの頃の記憶に、途切れているところがある。 そして、今判った。「君は……そうなのか?」 彼女が、コクリと頷いた。 「ボクは、綾乃ちゃんの記憶から遠ざかるために、彩香――君という都合の良い幻想を、成長させていただけなんだ……」 「いいえ、私は幻想ではないわ。私は綾乃。そして彩香。そのどちらでもあるの。森岡淳の意識が許す限り」 「ボクの意識が、許す限り?」 「そう、アメリカに来てからの森岡淳が意識した夢やヴィジョン、それにジョナサンにイブやメルスとの出会い、その他のもの全て、そして私。その繋がりを森岡淳の意識が認め、それを許す限り、私は私でありつづけられるの」 ボクは、手で顔を覆う。「今までの全てを、認めろと言うのか?」 「そう。それが六番目の鍵よ。全ての意識を許し、認め、受け入れること――全てを許認すること。本当のあなたは、今まであなたが感じてきたことだけで解決するような存在意識ではないの。もっと広くて深い意識を受け入れること――それが、あなたが子どもの頃に閉ざしてしまった心の扉を開けるための鍵なの」 「そんな、そんなことって……。でも、ボクは、君を――綾乃ちゃんのことを、ボクは・・・いや、君だけじゃない。さっきの意識のスポットでは、ボクはキリストを裏切ったユダで、そしてエジプトではジェドというファラオの裏切り者で、そして、君までも、綾乃ちゃんまでも――ボクは、ボクはいつでも、みんなを裏切ってきた奴で……。ボクは、ボクは……こんなのは、ボクじゃない!」 かがみ込んだ。 もし神が存在するというのならば、何故ボクをこんなにも辛い枷で束縛するのだ。神とは、もっと慈愛に満ち満ちた存在ではないのか。だが、現実は結果の通りだ。しょせん、神なんてものは太古の人間が勝手に作り上げた偶像で、今この世では拒絶するに値するモノなのだ。 拒絶――そうだ、よくよく考えてみれば、拒絶さえすれば……。 「ダメよ」彩香が、ボクの思惑を制するように、呟いた。「今の意識から、逃げようよしてはダメ。そうしないと、そうしないと……アンクセナメン――彼女が彼に逢えない。彼女がこのまま、ずっと迷宮の中だなんて……」 彩香は瞳を濡らす。 めいきゅう……? メルが彼女の肩から飛んだ。そして、ボクの前に降り立ち、首をかしげて、見つめた。 セルジオが、ボクの頬をつつく。「君が、子どもの頃からずっと追っていたメルが、今、目の前にいるよ。さあ、アンクセナメンさまを助けに行こう」 「助けるって、いったいボクは、どうすればいいんだ! ボクは裏切り者なんだぞ。裏切り者のボクに、いまさら何ができると言うんだ。ボクはいつでも、臆病者で、卑劣で汚い奴だったんだ! そんなボクに、何ができると言うんだ」 「淳、落ちつくんだ。言っただろう、言葉には気を付けろと。今の君の意識は、正しくない言葉に満ち満ちている」 ボクはセルジオを払いのけた。「言葉が何だって言うんだ。そんなものに力なんてあるものか!」 セルジオが、羽をばたつかせる。「自暴自棄になるんじゃない。今君が本当にしたいと思うことを、言葉に出すんだ。どうしよう、という迷いの言葉でなくて、どうするかを言葉にするんだ! それが、全てに繋がっていくんだ。今迷宮に閉じ込められた――君が大好きなアンクセナメンさまを、君は、どうするんだ」 「ボクは……ボクは」 言葉に詰まった。 いやだ、それを自分として認めるなんて。 「裏切る自分を――ボクとして」 自分のことばかりを考えている者が、ボク自身なのだと…… 「受け入れる。だから……ボクは、今、彼女を……」 彼女を……いや、違う! 助けなければならないのは、それは―― ボクは顔を上げ、彩香を見つめて頷く。 そして、微笑みながらゆっくりと、カノジョに、両手を差し出した。「おいで、メル」 カラスのメルを抱きしめた。 「淳くん!」 綾乃の瞳が輝く。 気がつくと、ボクは彼女の手を、しっかりと握りしめていた。 「あやのちゃん、しっかり!」 あらんばかりの力で「やあ!」と引き上げた。 びしょ濡れの彼女は、最初きょとんとしていた。が、しばらくすると、急に大粒の涙を頬からポロポロとこぼし始め、声をあげた。 それにつられてか、ボクも、目頭が熱くなってきて「あーん」と、涕泣した。綾乃は、しゃくりあげながら「ありがとう」と何度も言った。その都度ボクは「あーん、よかった、よかったね」と、息を切らしながら、頷いた。 怖かった。本当に怖かった。だが、それ以上に本能レベルでしなければならないことを、ボクは体の動きにすることができたのだ。 「ありがとう」綾乃が、真剣な眼差しで、ボクを見つめる。「ありがとう……ジェド」 ボクは、頷いた。 そういうことだ。 つまり、恐怖を超えたところに答えがあったのだ。 綾乃を助けることが、アンクセナメンを迷宮から救い出すことだったのだ。霊在意識の彩香は、ボク以外にスポットを合わせることが出来なかった。アンクセナメンは肉体から意識を離れる際、ツタンカーメンを思うあまりに、離脱がうまくいかず、迷宮に入り込んでしまった。その彷徨う意識こそが、彩香だったのだ。だから、彼女は綾乃の意識としてボクに助けを求めたのだ。そして今、彩香がいるからこそ、今度は彼を救うことが出来る、という確信に至った。 「行こう」 ボクは、彩香の手を取った。 「ユダを救いに」それが、ジェドを救う道なのだ。「今のボクなら、出来る」 |
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